メタルマスクの壁面処理について|メイコーテクノ

2021年09月28日時点の情報です。

メタルマスクの壁面処理について

こんにちは、㈱メイコーテクノ 品質保証・商品開発担当の、木村章稔です。

弊社コラム、《メタルマスクについて徹底解説》をいつもご覧いただき有難うございます。
6回目となります今回は、メタルマスクの壁面処理についてということで、些末な文面ながら私が語らせていただくこととなりました。
幼少からの趣味で本(文字)に触れている機会が多いせいか、文面に起こすこと自体はあまり苦ではありません。
本と言っても主にマンガですが。マンガが好きなこともあってアニメも好きですし、
バンドをやっていた経緯もありまして音楽、中でもアニソンやボーカロイドが好・・・・・。
すいません・・・私の徹底解説になるところでした・・・。

そいうわけでして、文章を書くことが苦ではありませんので、調子に乗って説明が長くなりすぎないように気を付けながら、
壁面処理について解説させていただこうと思います。

1.壁面処理とは?

 その名の通り“壁面”を“処理する”ことなのですが、ここで言うメタルマスクの壁面とは、“開口の壁面”のことを指します。
開口の壁面部分に、“物理的または化学的な処理を施す” ことを “処理する” と言い、総じて “壁面処理” と呼んでいます。

2.なぜ壁面処理をするのか?

 皆様もご存じかとは思いますが、電子部品の軽薄短小に伴い実装部品も小型化されています。
当然部品に合わせて基板のパットも狭小化され、さらに当然のように印刷をするメタルマスクの開口径も狭小化されます。
小さい開口にはんだペーストという粘度のあるものを詰め込み、さらにそれを型通りに抜こうというのですからなかなかに厳しいものです。
その厳しい条件下においても、“はんだペーストの抜けを良くする” “印刷性を良くする” ために生まれたのが “壁面処理” です。
これからますます狭小化される実装の印刷においては、メタルマスクの “壁面処理” はマストアイテムと言えるでしょう。

3.壁面処理が必要な基本的理由

 前述のように、メタルマスクを使用したはんだ印刷とは、“はんだペーストの型抜き” になります。
はんだの抜けとは “基板パットとメタルマスク開口壁面の綱引き” であり、勝った方にはんだが残るわけです。
当然基板パットの方が勝ってほしいのですが、相手のメタルマスク開口壁面もなかなかの強者でございまして・・・。
 今はSMT用メタルマスクの加工と言えば “レーザー加工” です。その名の通りレーザー光を用いて材料のSUSをカットしていくのですが、
このレーザー光はずっと出っ放しにして切っているわけではありません。ミシンをイメージしてみてください。
ミシンが連続で1針1針布を貫通していくように、レーザーを1発1発射出させ材料のSUSを貫通させていきます。
その貫通穴を少しずつ重ねて開けていくことで、結果的に “SUSを切断” することになっている訳です。
 この加工原理が故に、その1発1発のレーザーが通った痕跡が、開口部の壁面に縦条痕となって残ります。
丸形状のレーザー光を重ねて開けていくので、この壁面の縦条痕には山の部分と谷の部分、つまり凹凸が形成される結果となります。
ものすごく簡単に言いますと、メタルマスクの開口壁面は、“ギザギザしている” ということですね。
 先の綱引きの例ですと、基板パットが綱引きで容易に勝てない理由は、このギザギザにはんだペーストが引っ掛かるためです。
『それならそのギザギザをなくせば基板パットが勝てるのでは?!』 そうです、そこで登場するのが “壁面処理” です。
いろいろ種類や方法はありますが、このはんだの抜けを阻害する要因、“ギザギザ” をなくすことが、壁面処理を行う基本的な理由となります

4.壁面処理の種類

 一口に壁面処理と言いましても、各マスクメーカー様により様々な種類がありますが、基本的には以下の2通りになります。
①削る(溶かす)
②付ける
①は化学的に壁面のギザギザを削る(溶かす)方法です。電解研磨と言われる方法などがそうですね。
②は逆に壁面に物質をコーティングしてはんだを滑りやすくする方法です。撥水コーティングなどがこれにあたります。

5.削る(溶かす)方法

 今やポピュラーな処理となっている電解研磨を例にしてご説明します。
 簡単に言いますと、薬液にメタルマスクを浸漬させ電気を流して溶解させる処理になります。
この処理は、電気を流した際電流密度の高いところを優先的に溶かすという特徴があります。
“電流密度の高いところ” とはどこか…。そうです、開口壁面のあの憎き “ギザギザ” のところです。
ギザギザ、つまり山と谷の部分が形成されている壁面の “山” の部分が電流密度が高い箇所となるので、”山”の部分を優先的に溶かしてくれる、つまり山を削って平地に近づけてくれるわけです。
ギザギザを平らにすることではんだの抜けを阻害する要因を取り除き、“開口壁面にはんだが引っ掛からないようにしよう”というのがこの処理の特性となります。
 またメタルマスクを丸々浸漬させているので当然壁面だけでなく表面も溶かされるのですが、平面(平地)の部分は電流密度が高くないので、溶解速度も遅いため大きく溶かされないようになっていますのでそこはご心配なく。
 中には電気を使わない “化学研磨” という種類もあります。これは山谷(電流密度の高低)が関係なく、全ての箇所が均一に溶かされていきますので調整が難しいですが、壁面処理や表面改質(梨地にする等)に使用される場合があります。
 この削る(溶かす)方法ですが、薬液の組成、濃度比率、液温度、電流値、処理時間、処理方法により微妙な差が生まれます。
微妙な差ですがこの細かな調整をすることにより、通常の処理よりも上位の性能をメタルマスクに付与することも可能となります。
この上位版などは弊社でも商品化していますので、ご興味のある方はぜひ下記リンクをご覧になってください。

◎メタルマスク壁面処理『SF処理』

◎上位性能壁面処理『UF処理』

6.付ける方法

 こちらもポピュラーな処理となっている撥水コーティングを例にしてご説明します。
 前述の削る(溶かす)方法でメタルマスクの壁面を平らにしても、相手はあのネットリとした半田ペーストです。まだ壁面にくっついてきます。
『壁面がはんだを弾いてくれればいいのになぁ・・・。弾いてくれれば・・・。弾いて・・・。・・・・・・・・・・・・撥水?』というわけで撥水です。単純ですいません。撥水です。
正確にははんだペーストの “フラックス” が対象となるので “撥水・撥油コーティング“ となります。
 このコーティングですが、“開口壁面と基板面側表面” に施工されているのが一般的です。
これもプライマーを必要とするものとしないもの、焼成が必要なものと不要なもの、浸漬コーティングや塗布コーティング、ナノミクロンや1~2µmの膜厚など種類や方法は様々となっています。
 “開口壁面から弾いてはんだを滑らしてやろう” というのが基本的な目的ですが、実はこのコーティング、他にもお得な機能が付いています。
①コーティングにより洗浄液を弾くので洗浄後の乾燥性が良い。
②コーティングによりフラックスを弾くのでメタルマスク開口部のはんだの裏回りを抑制する。
③裏回りが抑制されることにより余分なはんだが転写されにくくなり印刷時のにじみが低減される。
前述の削る(溶かす)の壁面処理を行った後撥水・撥油コーティングをするのが一般的ですが、上記①・②のような機能のみでよろしければ、削る(溶かす)の壁面処理を行わずにコーティングしても十分だと思います。
 また付ける方法は上記撥水・撥油コーティング以外にも、めっきや樹脂をコーティングする方法もあります。
これも開口壁面と基板面側表面、または基板面側表面だけの施工などがありますが、こちらは撥水コーティングと比べもう少し膜厚が厚くなります。
厚い膜厚でコーティングすることにより、開口壁面のギザギザの凹凸を埋め平滑化させたり、めっきの梨地を利用して印刷時の版離れ改善をしたり、または樹脂の柔軟性を利用して基板のシルクなどの凸部分を吸収し、
メタルマスク開口とパットの密着性を向上させたりと、用途に合わせ各マスクメーカー様独自の様々な仕様が存在しています。
 どうでしょう…?試してみたくなりましたか…?

弊社でも耐久性の高い撥水コーティングや樹脂コーティングなどラインナップしております。

◎高耐久コーティング『撥水処理』


 いかがでしたでしょうか。壁面処理の技術は様々ですが、メタルマスクの印刷性能を上げお客様に満足のいく実装をしていただきたい、という目的はどれも同じです。
これからも新しい商品を皆様にご提供し続けていけるよう邁進して参ります。
今回の解説(長くなりすぎないようにがんばりました)も、少しでも何かのお役に立てれば幸いです。

当社では基板実装におけるお客様の課題解決を目的とし、「本気のモノづくりに応える」を掲げながら日々のモノづくりに取り組んでおります。

次回は「メイコーテクノ新商品情報」を紹介させていただきます。
弊社で取り組んでいる開発で近々お披露目する商品をいち早くご紹介致します。
是非とも楽しみにしていて下さい!

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      メタルマスクの壁面処理について|メイコーテクノ” に対して2件のコメントがあります。

      1. 平塚の金さん より:

        木村様 木村さんご自身の解説面白かったです。御社HPのコラムではありますが、今後御社の社員の皆様の詳細な自己紹介を記載されるもの良いのでは?と思いました。さて弊社もお客様にメタルマスクの抜け性について聞かれる事がありますが、説明する時に木村さんの記述されました「基板パットとメタルマスク開口壁面の綱引き」を是非引用させて頂きたいと思います。非常に良い例えだと思います。結びにレーザー加工やSF処理時のメタルマスクの断面の写真や絵を盛り込んで頂くと更に理解しやすくなると思います。

        1. 匿名 より:

          平塚の金さん様
           お世話になっております。メイコーテクノ 品質保証・商品開発担当の木村です。コメントを頂きありがとうございます。
          拙文ではありますが、少しでもお役に立てたようで大変嬉しく思います。また貴重なご意見もありがとうございます。弊社と致しましても『HPコンテンツを充実させるには』と日々模索しておりますので、大変参考になります。
          コラムに関してもですが、もしメタルマスクや実装関連商品等につきましても、ご不明点やご相談事、お困り事等ございましたら、こちらもぜひお気軽にご連絡ください。24時間年中無休・・・ではないのが申し訳ないのですが、少しでも皆様の課題解決になるようご対応させていただきます。
          引き続きメイコーテクノを宜しくお願い致します。

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