クリームはんだの【見える】技術と【見えない】技術
こんにちは、(株)メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
唐突ですが、皆様は展示会にはよく行かれますか?
私は職業柄(?!)出展社側として説明員対応したり、情報収集兼ねてお仕事の種を探しに見学に行ったりと、
割と展示会に接する機会は多いのかなと思っています。
2025年4月〜6月は展示会開催が結構めじろ押しで、
2025年4月16日~4月18日
コラムにも書きました、
※おかげさまで大盛況でした!!
2025年5月13日~5月15日
2025年6月4日〜6日
と毎月何らかの展示会に接する機会がありました。
個人的には…展示会はお祭りみたいで雰囲気は好きなんですよね!
テンション上がりませんか??(私だけ?!)
…
……
………決して遊びに行っているわけではないですからね。。。
↑毎月書いている気がする(汗)
そんな展示会で、はんだメーカーの松尾ハンダ株式会社の「竹」を使ったはんだ「FLF01-BZS(V)」を見つけ、面白そう!と思いコンタクトを取ってみたところ…同じ神奈川県大和市にはんだ製造工場があるではないですか!!
お会いした松尾ハンダ株式会社の担当者と「メタルマスクとはんだは切っても切れない縁なのに…灯台下暗しですね!」と意気投合(?!)し、今回のコラムでコラボする事になりました。
※今回はメタルマスクと密接に関係するクリームはんだに焦点を当てたご案内です。
松尾ハンダ株式会社の担当者と話をしていて面白かったのは、クリームはんだの違いってどこで出るのか質問したところ、
「ラーメン🍜と同じですよ」との事。
…こんなのコラムにするしかないですよね(笑)
という事で、クリームはんだがどうラーメン🍜なのかも踏まえて徹底解説致します。
1.そもそもクリームはんだとは?
クリームはんだ(ソルダーペーストとも呼ばれます)は、微細な球状のはんだ粉末と、粘性のある液体「フラックス」を練り合わせてクリーム状にしたもので、主にプリント基板に電子部品を実装する「表面実装技術(SMT)」において、部品と基板を電気的・物理的に接合するために使用されます。
糸状のやに入りはんだが手作業での「点」のはんだ付けに使われるのに対し、クリームはんだは「面」で効率的に多数の部品を一度にはんだ付けする際に不可欠な材料です。
このクリームはんだを基板の必要な場所に「塗る」ためにメタルマスクが必要になるので、切っても切れない縁となるわけです。
2.クリームはんだの成分
クリームはんだは、大きく分けて以下の2つの成分から構成されています。
成分 | 役割 |
はんだ粉末 | 加熱して溶けることで、電子部品と基板の導体を合金層を介して接合する金属の粉末。 主成分は錫(Sn)で、その他に銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)などが特性向上のために添加されます。 |
フラックス | はんだ付けを補助する化学物質。ペースト状の粘性を保つほか、以下の重要な役割を担います。 ・酸化膜の除去: 接合する金属表面の酸化膜を取り除き、はんだの「ぬれ性」を向上させます。 ・再酸化の防止: はんだ付け中に金属表面が再び酸化するのを防ぎます。 ・はんだの溶融促進: はんだの表面張力を下げ、スムーズに広がるのを助けます。 |
フラックス自体も、松ヤニを主成分とする「ロジン」、酸化膜除去能力を高める「活性剤」、粘度を調整する「溶剤」、分離を防ぐ「チキソ剤」などで構成されています。
3.クリームはんだの種類
クリームはんだは、用途や目的に応じて様々な種類があります。
- 合金組成による分類
‣ 鉛フリーはんだ
現在の主流です。環境への配慮(RoHS指令など)や人体への影響から鉛の使用が規制されたため、錫(Sn)を主成分に銀(Ag)や
銅(Cu)などを加えた合金(例:Sn-3.0Ag-0.5Cu)が広く使われています。有鉛はんだに比べて融点が高い傾向があります。
‣共晶はんだ(有鉛はんだ)
錫(Sn)と鉛(Pb)を約63:37の比率で混ぜた合金。
融点が約183℃と低く、作業性に優れていますが、昨今は上記環境への配慮から鉛フリーはんだへの置き換えも進んでいます。
※Wikipedhia「はんだ」より抜粋
・はんだ粉末の粒径による分類
微細な電極ピッチに対応するため、はんだ粉末の粒の大きさによっても種類が分けられています。
4.保管と取り扱いの注意点
クリームはんだは、フラックスの化学的性質や粘性を維持するため、品質管理が非常に重要です。
- 冷蔵保管: 未開封・開封後ともに、メーカーが指定する温度(例:0~10℃)での冷蔵保管が必要です。
- 使用前の準備: 使用する際は、冷蔵庫から出してすぐに使わず、結露を防ぐために未開封のまま常温に十分なじませる必要があります。その後、均一な状態にするためによく攪拌(かくはん)します。
- 使用期限: クリームはんだには使用期限があり、期限を過ぎると特性が劣化し、はんだ付け不良の原因となるため注意が必要です。
5.クリームはんだの【見える】技術と【見えない】技術
それでは本題です。
上記を踏まえまして、クリームはんだのどのへんがラーメンかというと、松尾ハンダ株式会社の担当者曰く…
「 はんだ粉末 = 麺 」 で 「 スープ = フラックス 」 だそうです。
・はんだ粉末 = 麺 = 見える技術
確かにクリームハンダのはんだ粉末組成については、SDS(Safety Data Sheet、安全データシート)を見ればその成分構成はほとんど把握できます。鉛フリーはんだの主成分であるスズ(Sn)、銀(Ag)、銅(Cu)の配合比率や、粒度分布などの基本的な情報は各社でそれほど大きな違いはありません。
ラーメンの麺でいうと、〇〇製麺所、太麺・細麺、多加水麺など、概ね分類できますよね。
しかし、はんだペーストの真の差別化は、実は"見えない"部分にあって
・スープ = フラックス = 見えない技術
松尾ハンダ株式会社の担当者に教えてもらったのですが、
フラックスの世界は、まさにラーメン店のスープのような奥深さがあって、主成分(ロジン系、水溶性系など)は各社でそれほど変わりませんが、そこに加えられる「隠し味」となる添加剤の配合こそが、各社の技術力と個性となる
そうなんです。
活性剤の種類と濃度、熱安定剤の選択、流動性調整剤のバランス…これらの絶妙な配合が、印刷性、濡れ性、はんだボール抑制効果、フラックス残渣の特性などを左右します。
「うちのスープの隠し味は〇〇だからコクがあるんだよ」…みたいな!まさに、ラーメンのスープと同じで、長年の経験と技術の蓄積なくしては成し得ない職人芸の世界ですよね!
あぁ…お腹が減ってきた。。。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、クリームはんだとは?から始まり、クリームはんだの特徴づけをラーメンに例えて解説致しました。
ちなみに、松尾ハンダ株式会社の「竹」を使ったはんだ「FLF01-BZS(V)」ですが、産学公連携の共同研究で開発された竹由来のセルロースナノファイバー(CNF)を使用する事で、接合性強度向上及び低ボイドを実現しているそうです。
気になる方ははんだの商品名のところに商品紹介ページのリンクを埋め込んでありますのでクリックしてみて下さい。
メイコーテクノでは基板実装におけるお客様の課題解決を目的とし、「本気のモノづくりに応える」を掲げながら日々のモノづくりに
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