メタルマスクテンションの仕組み|メイコーテクノ
2022年6月24日時点の情報です。
こんにちは、㈱メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
弊社コラム、《メタルマスクについて徹底解説》をいつもご覧いただき有難うございます。
第14回目となる今回は、メタルマスクの作り方シリーズと題しまして、テンションの仕組みにスポットを当てて徹底解説させていただきます。
第13回では、メタルマスクの「コンビネーション」って何?というところにスポットを当ててきました。
【第13回 メタルマスクのコンビネーションについて】
今回はメタルマスクコンビネーションについて更に深掘りをしまして、メタルマスクテンションについてご説明させていただければと思います。
コンビネーションの仕様について、お問い合わせが多くありましたので本コラムにまとめさせていただきます。
メタルマスクとしては、かーなりマニアックなお話となりますので、ご興味のある方のみの購読をお勧めします(汗)。
それでは徹底解説を進めさせていただきます。
目次
1.そもそも「メタルマスクテンション」って?
メタルマスクテンションについては、前回コラムにて紗張り枠テンションを転写法という方法を用いてSUS板に転写する事でメタルマスク自体にテンションが付与されるとご説明させていただきました。
【第13回 メタルマスクのコンビネーションについて 2-④.紗張り枠テンションをSUS板に転写】
後ほどご説明をさせていただきますが、メタルマスク自体のテンションはSUS板状態のメタルマスク仕様毎に変動してしまいます。
故にメタルマスクメーカーとしては、紗張り枠の状態でテンションを管理しております。
【第13回 メタルマスクのコンビネーションについて 3.張り具合はどうやって管理するの?】
ではその紗張り枠のテンションはどのような決まってくるのか?このへんもよくご質問いただく内容ですのでご説明をさせていただきます。
2.紗張り枠についてとテンションを決める2要素
紗張り枠とは?
紗張り枠とは、中空のアルミ枠を溶接した四角いアルミ枠(=メタルマスク枠)にテトロンメッシュという細かーい網目の網戸のような樹脂メッシュをテンションをかけて接着したアルミ枠+樹脂メッシュの事です。
紗張り枠テンションを決める要素として、テトロンメッシュの「①線径」と「②メッシュ数」が大きく関係してきます。
①テトロンメッシュの線径
簡単に言うと網目を構成する「線」の太さの事です。
網戸を想像していただいて、細(ほそ)いと引っ張るとすぐ切れますが、太いと切れにくいというのは想像していただけるかと思います。
また、細いと引っ張りやすいですが、太いと引っ張りにくいです。
曲がった糸と針金を引っ張るイメージをしていただけるとわかりやすいかと思います。
②テトロンメッシュのメッシュ数
メッシュ数はよく「#160」や「#225」といった数値で記載されています。
正直私も…なんのこっちゃい!と思ってましたが、調べてみると意外と簡単で。
・mesh=目の細(こま)かさを表す単位、1インチあたりの目の数を表す。(Wikipediaより引用)
との事で、1インチの中にどれだけの数の網目が入っているか、という数字である事がわかりました。
つまり、#○○○の数値が大きいほど網目が細(こま)かいという事になります。
メタルマスクにおいては、#160や#180、#225がよく出ておりまして、弊社は#160を使用しております。
メッシュ数は上記線径と大きく関係しており、細(ほそ)い線径だと細(こま)かいメッシュ数ができますし、太いと粗いメッシュ数となります。
単純に1インチ当たりに占める線径の面積の影響ですね。
テトロンメッシュの線径とメッシュ数はテンションを決めるにあたってテンションと耐久に相関関係があります。
・細くてメッシュ数が多い … 強いテンションが張れるが丈夫ではない(緩みやすい)
・太くてメッシュ数が少ない … 上記よりはテンションは張れないが丈夫(緩みにくい)
何が良いかというところは正直難しくて、どこを求めていくか、というところになるかと思います。
3.メタルマスクテンション測定の仕組み
では次にそのテンションをどうやって測定するのか?その仕組みについてご説明をさせていただきます。
前回コラムにおいて、紗張り枠テンションは基準値を設け、「テンションゲージ」というもので測定している旨ご説明をさせていただきました。
テンションを測定するテンションゲージは、実は2種類の測定方法があります。
①沈み込み量測定方式
テンションゲージ内に「重り」が入っており、その重りの沈み込み量で測定
【テンションゲージ プロテック社:STGシリーズ】
例)0.75mm、0.90mmなど、数値が少ない方が沈み込み量が少ないのでテンションが高いという事になります。
弊社ではこちらの方法でテンション測定を行っております。
②荷重方式
どれくらいのチカラが掛かっているかをN(ニュートン)で測定
例:10N、20Nなど、数値が大きいほどテンションが高いという事になります。
【テンションゲージ SEFAR社:M554R-100T】
注意点がありまして…①②それぞれの測定数値については相関がありません。
一応変換表は存在するものの、あくまで参考数値となりますので、テンション値を議論する際はどちらの方式の数値化を事前に把握する必要があります。
4.メタルマスクテンションの変動要素
※上記3-①沈み込み量測定方式でのお話とさせていただきます。
上記紗張り枠テンションは、線径とメッシュ数を決めてしまえば、一定の範囲でテンションを管理する事が可能です。
ただし、メタルマスクテンションとなると、更に様々な要素が加わってきます。
前回コラムでもご紹介させていただきました通り、メタルマスクとしてのテンションの変動要素は主に「板厚」「開口数」「開口位置」「SUS板サイズ」があります。
・板厚 … 薄いと沈み込みやすく(テンション低)、厚いと沈み込みにくい(テンション高)
・開口数 … メッシュ数と同じ考え方で、開口数が多いほどテンションが緩くなります。上記の中でここが一番変動してしまいます。。。
・開口位置 … 上記と同様で、開口のある部分のテンションが緩くなります。
・SUS板サイズ … メッシュよりSUS板の方が硬いので、SUS板サイズが大きい方がテンションが高くなります。
上記により、メタルマスクテンションは変動要素が多岐に渡り、管理値を設ける事が困難である為、メタルマスクメーカー各社は基本紗張り枠のテンションでテンション値を管理するのが一般的となっております。
5.メタルマスクテンションの印刷に与える影響
ここまででメタルマスクテンションの仕組みについては一通りご紹介をさせていただきました。
では肝心なところ!で、そのメタルマスクテンションがクリームはんだ印刷に与える影響はどうなのか?をご説明させていただきます。
一言で言うと…
・テンションが高い方が、印刷後の基板とメタルマスク版の版離れ挙動が安定する!
になります。
クリームはんだ印刷時は基板とメタルマスクが密着した状態で行われます。
机の上に置いた下敷きを想像してみて下さい。
下敷きと机だと静電気も関係しますが…そこは無視していただいて(汗)、机の上から下敷きを持ち上げるときに机にくっついて取りにくいですよね。
これと同じ現象が基板とメタルマスクでも起きてまして、下敷きの場合持ち上げると吸いて持ち上げるとき曲がりますが、厚めの鉄板だとまっすぐなまま持ち上げられます。
故にテンションが高いと基板へ吸いついて曲がったりトランポリンのようにビヨンビヨンとなったりすり事が無く、まっすぐなまま持ち上がるので、版離れ挙動が安定する!という事になります。
じゃあテンションは高い方が良いじゃん!となりますが…だいぶ長文になりましたので、ここからは次回へ持ち越しとさせていただきます。
いかがでしたでしょうか。
今回はメタルマスクテンションについて解説をさせていただきました。
メタルマスクテンションを決める要素は様々あります。
特に量産で使用する場合は、メタルマスクテンションに加え、耐久性も重要な要素になるかと思います。
このへんを加味してどれくらいを求めるか?というところがポイントとなります。
次回は今回の続きとして、高テンションメタルマスクについてご案内をさせていただきます。
当社では基板実装におけるお客様の課題解決を目的とし、「本気のモノづくりに応える」を掲げながら日々のモノづくりに取り組んでおります。
東京、神奈川を中心に、おかげさまで最近ではモノづくりの本場、大阪や愛知からのお問い合わせも増えてきました✨
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