高テンションメタルマスクについて|メイコーテクノ

こんにちは、㈱メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
弊社コラム、《メタルマスクについて徹底解説》をいつもご覧いただき有難うございます。
第15回目となる今回は、前回に引き続きまして、メタルマスクテンションについてのお話です。

第14回では、メタルマスクの「テンション」って何?というところから仕組みや変動要素についてご説明をさせていただきました。
【第14回 メタルマスクテンションの仕組み】

今回は前回持ち越しとさせていただきました、
・高テンションメタルマスク
についてご説明をさせていただければと思います。

※前回もマニアックなお話…とご案内させていただきましたが、今回もかなりマニアックです(汗)

それでは徹底解説を進めさせていただきます。


1.メタルマスクテンションの印刷に与える影響

前回のおさらい…
・テンションが高い方が、印刷後の基板とメタルマスク版の版離れ挙動が安定する!
旨をご案内させていただきました。

これは、クリームはんだ印刷時は基板とメタルマスクが密着した状態で行われる事から、机の上に置いた下敷きと鉄板を持ち上げる時の状況を例に挙げさせていただきました。
下敷きの場合持ち上げると吸いて持ち上げるとき曲がりますが、厚めの鉄板だとまっすぐなまま持ち上げられます(静電気の影響とか…そのへんは無視していただいて 汗)
故にテンションが高いと基板へ吸いついて曲がったりトランポリンのようにビヨンビヨンとなったりする事が無く、まっすぐなまま持ち上がるので、版離れ挙動が安定する!という事になります。

じゃあテンションは高い方が良いじゃん!…という事で、前置きが長くなってしまいましたが、次から高テンションメタルマスクについてご説明をさせていただきます。

2.そもそも「高テンションメタルマスク」って?

こちらは少し省略されていますが、正式には「通常よりテンションを高めたメタルマスク」という事になります。

メタルマスクテンションについては、以前のコラムにて紗張り枠テンションを転写法という方法を用いてSUS板に転写する事でメタルマスク自体にテンションが付与されるとご説明させていただきました。
【第13回 メタルマスクのコンビネーションについて 2-④.紗張り枠テンションをSUS板に転写】

この転写されたテンションを通常より高めましょう、というのが高テンションメタルマスクとなります。
ではこの高テンションをどのように設定するのか?この辺を次でご説明させていただきます。

3.高テンションメタルマスクを作製する方法

メタルマスクテンションを高くする方法は大きく分けて2つありまして、
①転写前の紗張り枠のテンションを高める
②メタルサイズを大きくする

があります。

①転写前の紗張り枠のテンションを高める について

紗張り(=紗(樹脂メッシュ)をアルミ枠にテンションをかけて張る)時に紗を機械で上下左右に引っ張りながら枠に接着していくのですが、この機械で引っ張る力を強くする事で紗張り枠テンションを高くする事ができます。

通常テンション値:0.9㎜前後

高テンション値:0.75㎜~0.85㎜

あれ?もっとテンション高くできないの??という声が聞こえてきそうですが、お察しの通り、引っ張りすぎると破れます(汗)
前回コラムでもご案内させていただきましたが、紗にはメッシュを構成する樹脂の線径とメッシュ数(網戸のイメージ)があり、これらの相関となりますので、もっと紗の選定から突き詰めていくと更なる高テンションを狙う事ができます。
ただし、これ以上テンションを張ると、今度は接着先のアルミ枠が歪んできます。
メタルマスクをよくお使いの(もしくは見られている)方々ですと、えっ…となるかもしれませんが、ひどいとあのアルミ枠が目に見えて反ります(笑)
そこで高テンションメタルマスクを作製する際は、アルミ枠も通常のものよりも強度の高い(=反りにくい)ものを使用します。
※アルミ枠はアルミ板をまげてパイプ状にしたものを四角に溶接しています。

通常アルミ枠:アルミ板厚2㎜~

高テンション用アルミ枠:アルミ板厚3㎜~

これらを準備して、高テンション紗張り枠を作製し、高テンション紗張り枠のテンションをSUSに転写させる事で高テンションメタルマスクの完成となります。

※テンション数値につきましては、500gの重りを置いた時の沈み込み量(mm)です。

②メタル(SUS)サイズを大きくする について

えっ…そんな事でメタルマスクテンションが高くなるの?と思われる方もいるかもしれません。
実はメタル(SUS)サイズを大きくする事でテンションは若干上がります。
冒頭でもご説明させていただいたように、メッシュ部分が少なくなりSUS部が多くなるので…下敷き理論(!?)で硬い方がテンションが高くなる為です。
ただし、こちらは①に比べて変化は少なく、「高テンション」というよりは「底上げ」程度にお考えいただいた方が良いかと思います。
※SUSサイズをどこまで大きくできるかは、各営業担当にご相談下さい。

まとめると、高テンションメタルマスクを作製する為には、
肉厚のメタルマスク枠を用意→高テンション紗張り枠を作製(→通常より大きなサイズのメタル(SUS)を用意する)→メタル(SUS)にテンションを転写となります。

4.高テンションメタルマスクのメリット・デメリット

次に高テンションメタルマスクをご使用いただくに当たってのメリットとデメリットをご紹介させていただきます。


◆メリット
・印刷時の基板との版離れ挙動安定

◆デメリット
・メタルマスク本体の重量増加(約2㎏→約3㎏にアップ)
・作製工数増によるコスト増(基本料金の約15%アップ)
・肉厚アルミ枠用意によるコスト増(肉厚アルミ枠をお持ちの場合はリサイクル使用可能です)
・テンション耐久性低下(特に細い線径の紗を使われている場合は伸びやすい、太い線径を使うとそもそも高いテンションが張れないというジレンマ…)

折角の高テンションメタルマスクですから、日々のテンション管理はしっかりしていきたいところではあります。
【メタルマスクテンションゲージ プロテック社:MTG-08A】

5.着脱式メタルマスク「疾風」とテンション

では着脱式メタルマスク「疾風」でも高テンションはできないのか?とよくお問い合わせをいただきます。
ここは正直微妙なところでして…そもそもの着脱式のコンセプトに関わってきます。
高テンション疾風フレームを開発できるか?については「YES」(開発費の問題は横に置いておきます 汗)なのですが、テンションの調整ができるか?については「NO」となります。

着脱式は弊社の「疾風」を含み、メタルマスク枠の部分にSUSを引っ張る機構が内蔵されており、これによって着脱毎にテンションを張れるようになっております。
つまりは着脱毎にテンションが掛かりますので、調整できる=テンションにバラツキが出てしまう、という事になります。
(メタルマスクテンションはメタル厚や開口数、開口位置でも変わってくるので、調整ができてしまうとよくわからなくなります。。。)

よって、弊社「疾風」のコンセプトは着脱毎のテンションが同じになる!をコンセプトにさせていただいております。
疾風フレームは、通常テンションのアルミ枠タイプと同じテンションになるように設計されておりますので、高テンションをご希望の場合は、アルミ枠付きタイプをご選択いただければ幸いです。


【着脱式メタルマスク『疾風』の特徴】

【メタルマスクメーカーが着脱式メタルマスクを調べてみた】


いかがでしたでしょうか。
今回は高テンションメタルマスクについて解説をさせていただきました。
軽薄短小化に伴い、印刷時の細かな挙動でさえ印刷品質に影響を及ぼすようになってきました…。
逆に言うと、技術的にはまだまだやる事があるという事です!

当社では基板実装におけるお客様の課題解決を目的とし、「本気のモノづくりに応える」を掲げながら日々のモノづくりに取り組んでおり、トレンドを先取りできるような技術開発が進められるよう努めております。

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