品質改善事例集 ~金フラ基板へのはんだ付着低減について~

こんにちは、㈱メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
弊社コラム、《メタルマスクについて徹底解説》をいつもご覧いただき有難うございます。

第26回目となる今回は“品質改善事例集”をご紹介させていただきます。
基板実装における印刷工程は、実装品質の重要なファクターであることは今までのコラム内で書かせていただいた通りで、皆様も周知の所かと思います。

そのような中で、メタルマスクメーカーである我々には、日々品質改善についてのご相談が寄せられております。
今回はこれらの品質改善事例の中からピックアップさせていただき、どのようなステップを踏んでお客様と改善を行ってきたかをご紹介できればと思います。

今回の内容が好評でしたら、「事例集」はシリーズ化していこうかと考えておりますので、是非「良かった」「こうした方が」等々反響をいただけると嬉しいです。

それでは徹底解説を進めさせていただきます。


1.そもそも「金フラ基板」とは?

さて改善事例をご紹介するにあたり、そもそも「金フラ基板」とは何ぞや、というところからご説明させていただければと思います。
「金フラ」は基板の表面処理の一つで、正式名称は「無電解金メッキ」でフラッシュ金やENIGと呼ばれたりもします。
他の表面処理と比べて金フラ基板の一番の特徴は、はんだの濡れ性が高く平滑度も高いところにあり、1005以下の小さな部品がたくさん載るスマートフォンやデジタルカメラの基板によく使われています。
導通も良いので、市販品とかでもちょっとお高いケーブルで「金端子」なんてのを良く見ますよね!
難点は「金」なのでお値段が高いところ。。。($💵の金ではなく、Goldの方ですからね!)

基板の表面処理については、グループのメイコーでわかりやすい記事がありましたので、是非こちらもご覧下さい。
◎MEIKO Laboプリント基板製造BLOG「超初心者向けプリント基板の基礎知識:表面処理」

今回の改善事例は、金フラ基板にシールドを取り付ける必要がある機種に対し、はんだ付着があるとシールドに浮きが出てしまう懸念から厳しい管理基準が設けられており、
それに沿うべくお客様といろいろトライさせていただいたという経緯があります。

2.はんだ付着のメカニズム

上記の通り、基板へのはんだ付着を低減する取り組みを行うにあたり、まずはそもそもなぜはんだが付着してしまうのか、という事をご説明させていただきます。
一言でいうと「隙間からの横モレ」です。

図:1横モレ

そう、私も子供がオムツをしている時はしっかりオムツ替えができていなくて、隙間から…🍦なんて事が時々(しばしば?!いつも?!)ありました。
メカニズムは同じで、シルク文字、パターンの段差、レジストの厚み…等々、基板には様々な凹凸があり、この凹凸とメタルマスクの隙間からクリームはんだが横モレするわけです。

特にメタルマスクの基板接触面側に滲んでしまう、いわゆる「裏周り」は厄介で、印刷機での裏拭きでしっかり拭き取れていなければ次のまた次の基板へはんだを付着させてしまうのです。

では、はんだの付着を減らすにはどうすれば良いか?
そう、しっかり拭くか、そもそも横モレしないように隙間を無くすか、です。

……
………
この記事を書きつつ、子供のオムツが取れたのはいつ頃だったっけなー、と原稿の締め切りが迫っている中懐かしい気持ちになりスマホの写真漁りをしていたのは内緒のお話。(ごめんね、アベさん!)

↑アベです。原稿いつ来るんやー!まさか忘れてるんじゃ!?」と思っていたら呑気にお子様の写真を見ていたなんて!!許せ …ます(笑)←

次からは何を根拠にどう対策を打ってどうなったか?まで、かなり突っ込んだ内容でご説明をさせていただきます。

3.改善へ向けた取り組み

3-1 撥水処理付与
まずは結果から。これは効果はあったものの、狙っていた基準までは達しませんでした。

まず弊社の撥水処理は撥水といいつつ撥油性もありますので、印刷機による裏拭きの効果を上げるのと、そもそもメタルマスクにはんだが残らないようにとの2本立てで挑みました。
簡単に言うと、しっかりマスクからはんだを抜いて、しっかり拭けるようにする、という感じです。
◎滲み抑制、連続印刷性向上『撥水処理』

お客様の方でも、印刷機による裏拭きの回数や湿式・乾式など色々なトライも追加していただきつつ、改善方向ではありましたが厳しい基準を満たすまでに至らずでした。
これはそもそも横モレの原因を潰さないとね、となり次の取り組みに繋がっていきます。

3-2 CoCo処理付与
基板の段差を吸収、そう!我々の『CoCo処理』の出番ではないか!という事でご提案させて頂いたのですが…
結論としてはこれは失敗でした。。。
◎はんだ滲み低減「COCO処理」

このCoCo処理は、開口部分からある一定範囲を残して、それ以外を削る事によって、基板のパッドに近づける処理なのですが、
図2のように残してある部分が基板の凸に乗っかってしまうと、平坦のバランスが崩れて最悪の場合は悪化するケースがあります。
(※上記あるので、CoCo処理適用をご検討の際は基板データも合わせてご支給いただく事で、事前にバランス崩れリスクの低減が可能です。)

図2:シルクとの関係によるCoCo処理の挙動

本件も悪化はしなかったのですが、当初想定してた横モレ対策には十分な効果は得られませんでした。

3-3 UF処理付与
最後にちょうど当時SF処理の上位版との事でリリースさせていただいたばかりの『UF処理』があり、特徴として「今までで一番の壁面平滑」と「今までで一番の開口エッジ鋭角」でしたので、
ちょっと極端ではありますが、下図③のようなイメージで(画像準備中です)撥水処理との合せ技でご提案をさせていただきました。
◎壁面平滑、開口エッジ鋭角化処理「UF処理」

結果としては効果テキメンで、はんだ付着率は1/1000となり、下図4の通りほぼはんだ付着が無くなりました。

図4:結果(はんだ付着Before&After)

※横軸:基板枚数、縦軸はんだ付着度数

4.改善結果と考察

上記の通り、UF処理と撥水処理の相乗効果ではんだの付着がほとんど見られなくなりました。
この結果に至るまでに上記のような紆余曲折があったわけですが、お客様とともに仮説を立て、それに向けてアクションしていくというとても貴重な経験となったのは言うまでもなくですが、
UF処理については当初「まあやってみっか…」であったのは正直なところで、結果が出てお電話いただた際のお客様のビックリ具合が一番貴重な経験だったかもしれません(笑)。


いかがでしたでしょうか。
このはんだ付着低減に向けた活動はとても貴重な経験の一つであるのは間違いないのですが、本件以外でも様々なご相談があり、様々なトライを続けて参りました。
今回事例集を掲載させていただくに当たり、社内データやネット情報など様々な情報を集めて記事を書かせて頂いたのですが、
改めて感じたのは、こういった現場感のある実装関連情報が世の中にはとても少ないんだなという事に改めて気付かされました。

メタルマスクに関する情報発信を初めて2年とちょっとになりますが、当初から掲げていた「メタルマスク、如いては実装関連情報のハンドブックとなり得るツールを目指す」を実現したい気持ちが更に強くなりました。
これからもお役に立つ情報発信を心がけて参りますので、弊社メタルマスク徹底解説を今後ともよろしくお願いします!

当社では基板実装におけるお客様の課題解決を目的とし、「本気のモノづくりに応える」を掲げながら日々のモノづくりに取り組んでおります。

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      品質改善事例集 ~金フラ基板へのはんだ付着低減について~” に対して2件のコメントがあります。

      1. 既に人物特定されております(笑)平塚の金さんより (遠山の金さんのパクリ) より:

        毎回のコラムにて私の様な素人にも大変解かり易く解説頂き、大変勉強になっております。有難うございます。投稿文の中で笑えるネタ(オムツ他)が記述されておりますので技術的な投稿でも拝読するのにまったく抵抗がなく入り込みやすいです、と言いますか読者の心を掴んでますね。今回の事例での「合わせ技」って結構効果ありますよね。実装においても同じです。又弊社は現状の実装品ではSF処理でお客様の仕様は満足しているとの認識ですが、ご参考までに上位のUF処理の場合は従来の価格に対し何%くらいアップするでしょうか?

      2. ㈱メイコーテクノ 山口裕之 より:

        遠山の金さんをパクっている平塚の金さん

        いつもコメントをいただき有難うございます!
        コラムの内容を楽しんでいただいているようで何よりです。
        「合わせ技」は実装においても同じなのですね!
        コナン並みの推理力で人物特定をしてしまいましたので(笑)。今度是非そのへん聞きに取材に行かせて下さいね!

        さて、ご質問の件、
        >参考までに上位のUF処理の場合は従来の価格に対し何%くらいアップするでしょうか?

        →基本料金(疾風かコンビネーションか)によりパーセンテージが変わってきますのでおおよそですが、
        ML→UF 70%アップ
        ML→SF 30%アップ
        SF→UF 40%アップ
        となります。
        最適は壁面処理の選択は、各種データを用いてのご提案させていただく事も可能です。
        より良いものづくりに向けて協力しながら進めていけるといいですね。

        今後とも宜しくお願い致します。

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