メタルマスクでできる実装改善~ブリッジ対策編~
こんにちは、(株)メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
ここ最近、SMTのトレンドに触れる機会が目白押しでした。
2025年12月のコラムでもご紹介しましたマウンターメーカーFUJI様主催の「JISSO Seminar 2025 in ASEAN」、そして2026年1月の「第40回 ネプコン ジャパン」。
特にネプコン展が開催された東京ビッグサイトはものすごい活気で、『リアル』な展示会が完全にコロナ禍前の熱気を取り戻したことを実感しました!
あまりの人の多さに新米営業女子:塚越が本当の意味での「ぐるぐる迷子」になったのは内緒のお話(笑)。
さて、この2つの大きなイベントを通じて業界のトレンドを探ってきたのですが、
何よりも印象的だったのは、各社が「省人化・自動化」を前面に打ち出していた点です。
「人が介在しない基板実装ライン」がいよいよ現実味を帯びてきました。
しかし、実際の現場はどうでしょうか。
「最新の自動機を入れたのに、チョコ停(一時停止)がなくならない」
「結局、エラー解除のために人が走り回っている」
…そんなお悩み、現場では「あるある」ではないでしょうか?
SMT品質の7割は「印刷工程」で決まると言われます。
上流である印刷品質が安定しなければ、どんなに優秀な自動機もその性能を発揮することはできません。
そこで今回は、自動化ラインの天敵となる「はんだブリッジ」について、実際のご相談事例をもとに深掘りしていきたいと思います。
なぜ、そのブリッジだけ消えないのか?
※実装不良の種類と発生原因については、以前の記事でも詳しく解説しています。
「1.基板表面実装における不良の種類とその発生原因」をご覧ください。
ブリッジが発生した際、多くの技術者はまず「印刷条件の見直し」や「開口補正(リダクション)」を行います。
しかし、「いくら条件を振っても、特定の箇所だけブリッジが消えない」という経験はないでしょうか?
実際に私たちメイコーテクノにご相談いただいたお客様も、まさにこの状況でした。
これ以上パラメータをいじりようがない…という段階で、「現物の基板」やデータを詳細に観察しました。
お客様からは「シルクなしのサンプル基板ではブリッジが発生しなかった」という貴重な情報もいただいており、そこで目をつけたのが「シルク文字」でした。
2Dの図面上では見えませんが、実際の基板にはシルク印刷(文字や枠)による「厚み(約20μm~50μm)」が存在します。
もし、パッドの至近距離にこのシルクがあったらどうなるか?
①メタルマスクがシルクの上に乗り上げる。
②パッドとマスクの間に、シルクの厚み分の「隙間」が生まれる。
③その隙間からはんだが漏れ出し、隣と繋がる。
これが、パラメータ調整では直らないブリッジの正体でした。


「CoCo処理」による解決と、新たな課題
原因が「段差」であれば、マスク側でそれを避ければいい。
私たちは、マスクの基板接触面(裏側)にシルク逃げ溝を掘る「CoCo処理」を提案し、トライを行いました。

しかし、ここからが本当の戦いでした。以下は実際の検証プロセスです。
- 【Try 1】 全体にCoCo処理(シルク逃げ)を実施
- まず、基板全面に対してシルク逃げ加工を行い、かつブリッジ箇所の板厚を薄くしました。
・仕様: 該当IC部 100μm→80μm / その他 120μm(全体CoCo処理)
・結果: 狙い通り、問題のブリッジは完全に消失しました。
・新たな問題: ブリッジは直りましたが、今度は「他部品のフィレットが心もとない」という現象が起きました。
リフロー後のはんだの濡れ上がり方が、明らかに弱々しくなってしまったのです。
- 【Try 2】 患部のみCoCo処理を実施
- 「全体への影響が出るなら、患部(ブリッジ箇所)だけ加工しよう」と考え、部分的なCoCo処理をご提案しました。
・仕様: 該当IC部 80μm+部分CoCo処理 / その他 120μm
・結果: なんと、ブリッジが再発。他部品のフィレットは戻りましたが、本末転倒です。
・分析: 部分的な加工ではマスク全体のバランスが悪く、局所的な密着効果が十分に発揮されなかった(マスクの浮きが解消しきれなかった)と推測されます。
- 【Try 3】 全体CoCo処理 + 「板厚アップ(+10μm)」
- Try 1の結果から、私たちはある「仮説」を立て、設計を変更しました。
Try 1の開口設計(IC部)はそのままに、ベースとなる板厚を「シルク高さ吸収分」として+10μmアップする提案を行いました。
・仕様: 該当IC部 80μm / その他 130μm(全体CoCo処理)
・結果: ブリッジなし。他部品のフィレットも十分な強度を確保。
・成果: 印刷起因の停止がなくなり、お客様からは「非常にスムーズに生産できるようになった」とのお言葉をいただきました。
今回のトライで分かった「密着の『落とし穴』」
なぜ、CoCo処理をして密着させたのに、Try 1ではフィレットが痩せてしまった(心もとなかった)のでしょうか?
ここには、SMT印刷の重要なメカニズムが隠れていました。
・通常の印刷は「浮いている」
従来のフラットな印刷では、マスクはシルク文字(20~50μm)に乗っかって浮いています。
実は、この「浮いた隙間」にもはんだが入り込むことで、結果的に設計値(開口面積×板厚)よりも多くのはんだが供給されていたのです。
・密着すると「正直」になる
CoCo処理で基板に完全密着させると、隙間がなくなります。
すると、これまで隙間に入っていた「シルク高さ分(約20μm相当)」のはんだ量が供給されなくなります。
その結果、はんだ量が減少し「フィレットが心もとない」状態になったのです。
つまり、CoCo処理はブリッジ対策には劇的な効果がありますが、同時に「はんだ量が減る(適正量になる)」という側面も持っています。
だからこそ、Try 3のように「減る分を見越して、あらかじめ板厚を上げる」というトータルコーディネートが必要になるのです。
まとめ
様々な開口設計を行ってもブリッジが改善されない場合は、是非一度「メタルマスクと基板の密着」を見直してみてください。
・直らないブリッジがある。
・シルクやレジストの段差が気になる。
・でも、十分なフィレットは確保したい。
そんな時は、ぜひメイコーテクノにご相談ください。
私たちは単に穴を開けるだけでなく、こうした「段差」と「リフロー後の接合品質」の相関関係まで考慮し、お客様のラインが止まらないための最適な設計をご提案致します。





