CoCo処理開発秘話|メイコーテクノ

こんにちは、㈱メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
弊社コラム、《メタルマスクについて徹底解説》をいつもご覧いただき有難うございます。
第16回目となる今回は、少し趣向を変えましてメタルマスクの開発に関わるお話です。

基板実装は軽薄短小の流れの中、難易度はどんどん上がってきています。
このような中、メタルマスクについても世の流れに遅れを取らないよう、日々テーマを模索して新しい商品の開発を検討しております。

このような中、約4年前にリリースさせていただきましたメタルマスクオプション処理『CoCo処理』についての開発秘話をお話をさせていただければと思います。

それでは徹底解説を進めさせていただきます。


①そもそも『CoCo処理』とは?

開発秘話をお話させていただくにあたり、そもそもCoCo処理って何だっけ?というところからご説明させていただきます。
◎シルクの厚みによるはんだ滲み低減 『CoCo処理』

一言で言うと、基板のシルク印刷文字の段差を吸収し、メタルマスク開口を基板のパッドに近づける処理です。
処理の内容としては、開口の周辺を残し(ご指定の板厚)、それ以外の箇所(基板接触面側)を「特殊処理」で掘り込みます。
開口部周辺(基板接触面側)を凸とする事で、スキージング時にシルクの段差を吸収し開口部を基板パッドに近づける事ができるので、基板とメタルマスクの隙間由来の滲みやシルク高さによるはんだ過多を抑制する事ができ、印刷の安定性を向上させる事が可能です。

ただし、凸は開口部(≒基板パッド)から0.2mmを基本とさせていただいておりますので、この中にシルク文字があると凸部分にシルクが乗っかる事になりますので、最悪の場合は印刷性が悪化する場合があります。
CoCo処理をご検討いただく際は、是非一度シルク含めたデータを事前に確認させていただく事で、より良いご提案をさせていただく事が可能です。

ちなみにCoCo処理の名前の由来はわかりますでしょうか?
実はCoCo処理をご紹介するとよく聞かれる内容なのですが、何だと思いますか?と聞くと答える人の趣味趣向がわかったりします(嘘ですw)。
食いしん坊の人はカレー(ココ壱番屋!)、そこそこ年齢の進んだ(?)人はアイドル(昔COCOってアイドルがいました!)なんて答えをお聞きする事もあります。
実際は………、もったいぶって最後に書きます。

②CoCo処理開発経緯

基板の凹凸吸収による印刷安定性の向上を狙ったCoCo処理ですが、開発をスタートしたのは遡る事約5年前の2017年です。
それまで注力していたメタルマスク省スペース化を実現する『疾風』の開発と商品リリースが一段落した事で、次は先々の軽薄短小による印刷難易度アップの課題解決を狙い、「高印刷性マスク」の開発に着手する事となります。
当時は某コンデンサメーカーのニュースにより、軽薄短小が加速的に進むのではないかとの推測が巷で話題となっていた時期です。

アプローチ段階では、メタルマスク開口壁面平滑化とはんだの抜け性向上(実はこれが一昨年リリースさせていただいた『UF処理』につながるんです!)として「削る処理」「付ける処理」含め様々なテーマが上がりました。
その中の1つとして基板とメタルマスクのGAP(隙間)による印刷のバラツキのご相談が多くあった事から、これに着目してCoCo処理開発を進めさせていただく事となりました。
お問い合わせが多くあったのは、メイコーグループだから基板の事を聞いてみようかな、というのも少なからずあるのかなと思っています。
・メイコーのホームページ
・メイコーのYoutubeチャンネル「メイコーTV」

③CoCo処理の仕様が決まるまで

では実際にCoCo処理の仕様をどう決めていったのかをご紹介させていただきます。

①シルクを避けるのだから、基板シルクに合わせてメタルマスクを掘り込んでみる。

目的が「基板とメタルマスクのGAPを埋める」なので、GAPを作る要因である基板シルク文字に合わせてメタルマスクを掘り込めば凸と凹でピッタリ密着するのでは?という解釈です。
結果としては…失敗しました!要因はシルク文字って…ズレるんです。。。せっかくシルク文字に合わせて掘り込んでもうまくハマらず、印刷テストをしても効果は確認できずでした。
見た目はすごくかっこよくて!メタルマスク開口周辺ににシルク文字が埋め込まれているんです。訪問させていただく際のネタとして、そのうち作ってみようかなと思ってます。

②逆の発想で、避けるのではなく近づけてみる。

①の失敗を元にして、シルクを避けるのが難しいのであれば、近づけてみよう!という事で、開口の部分に凸を作ってみる事になりました。
しかし…凸を作ると板厚が変わってしまうという問題に直面、であればはんだ量に影響しないところは削ってしまおう!という事で今の開口部周辺以外凹という仕様になりました。では実際にどれくらい凹ませれば基板のシルク文字を避けられるのか? ここは正直あまり苦労しませんでした。
近くに基板工場があるので! (メイコー神奈川工場の皆さん、その節はお世話になりました!)

結論としては「開口部周辺を残して50μm掘る」仕様を標準としました。
根拠としては、基板工場に確認したところ、シルク文字の一般的な高さが20~30μm、シルク文字はレジストの上に乗っているので、レジストの高さ分で20~30μmという事で、それぞれの中間を取っています。

ここで興味深い内容がわかったのですが、実は…基板(メイコー製基板以外も調べました!)のレジストやシルクの厚み(高さ)にはMIN設定はあっても、MAX値を設定しているところはユーザー様個別仕様を除いて無かったんです。
レジストの目的は「絶縁」、シルクの目的は「文字表記」なので、目的から考えるとわからなくはないのですが、この辺が実装泣かせな部分になってしまっているのだと思います。

④CoCo処理開発のその後

さて、そんなこんなで仕様が決まりまして、印刷テスト結果も良好な結果が得られたため、新商品としてリリースする事となりました。
商品リリースから4年が経過しまして、売れ行きはどうだったのか?
ここまで読んでいただいた方は、さぞ売れているだろうと想像いただいている事と(?)思います。

実際は…とてもご好評はいただいているものの、飛ぶようには売れておりません(汗)
CoCo処理の特徴として、基板由来の実装不具合改善で選択いただくケースが多くスポット要素が強い事、及び基板由来なので最終的には基板改版や仕様決めで解決されるケースが多いのです。
全ての基板にCoCo処理を!となれば数は出るのでしょうが、「このブリッジってシルクが影響してるよね?」という原因の特定でご使用されるケースもよく拝見します。
いっぱい売れてほしいと思う反面、お客様の課題解決に貢献しているというのもありますので、これからも愛情をもってCoCo処理をご紹介していきたいと思います。

⑤CoCo処理命名の由来

それでは、ひっぱりにひっぱったCoCo処理命名の由来ですが…
カレーでもアイドルでもなく、
・凸→Convex

・接触(密着)→Contact


の頭文字を取って『CoCo処理』となりました。

ここまで読んでいただいた方は「なるほど!」ですよね?!
最後までひっぱる内容ではないじゃないか!というクレームは受け付けません(笑)


いかがでしたでしょうか。
今回はCoCo処理開発秘話についてご紹介をさせていただきました。
基板表面の段差50μmは昔は大きな影響は無かった(目立たなかった)のですが、軽薄短小化に伴い薄いSUS板を選択されるケースが増えてきている昨今、50μmの基板表面の凹凸の影響はどんどん大きくなってきます。
(メタル厚100μmなら、はんだ量が最大1.5倍になる可能性がある…。)
基板凹凸由来でお困りの皆様、CoCo処理はいかがですか?再度、営業活動をさせていただき締めとさせていただきます。

当社では基板実装におけるお客様の課題解決を目的とし、「本気のモノづくりに応える」を掲げながら日々のモノづくりに取り組んでおり、トレンドを先取りできるような技術開発が進められるよう努めております。


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