メタルマスクコーティング処理について|メイコーテクノ

2023年01月30日時点の情報です。

こんにちは、㈱メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
弊社コラム、《メタルマスクについて徹底解説》をいつもご覧いただき有難うございます。

第21回目となる今回は、「メタルマスクオプション処理解説」をシリーズ化させていただこうと考えておりまして、その第一弾として「メタルマスク撥水処理について」をご紹介させていただきます。

基板実装における印刷品質は、メタルマスクの厚みや開口設計をどのように設定するかによって大きく変化してきます。
メタルマスクのオプション処理は、特に軽薄短小の基板や大小部品混在基板において、設定した厚み・開口設計から求められる理想的な印刷結果に近づける為に用いられる事が多いです。

メタルマスクオプション処理については、以前のコラムで「削る処理」「付ける処理」の2パターンがある事をご紹介させていただきました。
◎メタルマスク壁面処理について

今回は「付ける処理」の代表格であるコーティング処理について解説をさせていただきます。

それでは徹底解説を進めさせていただきます。


1.コーティング処理についての前置き

皆様コーティング処理と聞くと何を浮かべるでしょうか?
私は自動車の窓などに塗る「ガラコ」を思い浮かべます。
これは特殊な薬液をガラス表面に塗布する事で撥水・撥油性を付与し、雨の日の水弾き、汚れの付着抑制、くもり止めなどの効果が得られるものです。
私が若かりし頃(?!)は塗ってもいつの間にか効果が無くなっていて何度も塗りなおした記憶があります。
本コラムを書くにあたりガラコのホームページを眺めていると、今は超持続性のもの、ガラコワイパー、ウォッシャー液、洗車用など様々な種類が出ていて驚きました。
超持続性のものなどは「4か月間効果持続」なんてものもあり、今更ながら化学の進歩ってすごいなと改めて感じた次第です。
知っとるがな!という方が多いかもしれませんが…私、車には疎いもので…ご容赦下さい(汗)。

さて、私はガラコ販売の営業ではありませんので(笑)、そろそろ本題に入らせていただきます。

メタルマスクにおけるコーティング処理についても上記と同様で、特殊な薬液を塗布して撥水・撥油性や基板への密着性を上げるなどの様々な効果を得る事を目的としています。
※今回は撥水・撥油性付与のコーティングにスポットを当てさせてご説明させていただきますね。

メタルマスクにおける撥水・撥油コーティングは、基本的には基板接触面側とメタルマスク開口壁面に塗布されます。
メタルマスクは毎回ガラスエポキシ樹脂や銅、硬化したインクが主材の基板を押し当てられ、反対面からは車のワイパーと同じように、ゴム・プラスチック・SUSのヘラ(スキージ)が押し当てられて行ったり来たりと…なかなか過酷な条件で使用されます。
ゆえに、メタルマスクにおけるコーティング処理でよくお問い合わせをいただくのが「コーティングの耐久性」となります。
弊社の撥水・撥油コーティングは「高耐久」を謳わせているのですが、なぜ高耐久になるのか?撥水・撥油コーティングにはどのような種類があるのか?その辺の原理を次でご紹介させていただきます。

2.コーティング処理の原理

コーティング処理の種類は大きく分けて次の2つがあります。
①薬液の種類
②固着方法

これらの組み合わせによって効果や耐久性が決まってきます。

①薬液の種類

撥水タイプ
撥水タイプの特徴は、水がかかっても水玉状になって弾かれ、コロコロと転がるように落ちることです。
水落ち・汚れ落ちに優れており、汚れが付着しても使用後の洗浄が比較的簡単なところがメリットです。
デメリットとしては、水玉状になった水滴がイオンデポジットやウォータースポットを発生させてしまう点です。他のタイプのコーティングと比べると染みが付きやすい傾向があります。

◆親水タイプ
親水タイプの特徴は、水滴が塗布面に馴染んで塗布面に残留せず、水玉の形状になりにくいことです。
この働きによるセルフクリーニング効果によって、汚れは水での洗浄時に共に流れ落ちます。
デメリットとしては、撥水タイプのガラスコーティングのように水を弾く効果は持っていないため、コーティングの効果が感じづらいことです。
他にも水分を拭き上げる際に、塗装面に水が馴染んで広がってしまうために、拭き取りづらく感じる場合があることも挙げられます。

◆疎水タイプ
疎水タイプの特徴は、撥水タイプと親水タイプの中間に相当する水弾き性能を有することです。撥水タイプほどの水弾きはないものの、水滴が塗装面に馴染むことで染みは付きにくくなります。
また、親水タイプと比べると使用後洗浄時の汚れの落ち具合は良く、洗浄後の水分の拭き取りも楽になります。

これらの特徴から、水をある程度弾き、染みを付きにくくしたい場合に向いているのは撥水タイプで、メタルマスクに撥水が選ばれる大きな要因となります。
ただし、少量の水分がかかった場合には、水滴が残留してイオンデポジットができやすい点には注意が必要です。

固着方法

◆乾燥、焼き付けタイプ(物理的固着)
メタルマスク向けはフッ素などの有機化合物成分を含むものが多く、化学反応ではなく乾燥によって固まります。
その他にも油脂コーティング(ワックス)や樹脂コーティング(ポリマー)などがあり、塗布して乾燥もしくは焼き付けるだけになりますので手軽にコーティングを付与する事が可能です。
デメリットとしては有効成分の含有量などによって持続期間の目安が大きく変わるものと、次に説明する分子結合被膜に比べるとどうしても耐久性に劣る点です。

◆分子結合
ステンレスと撥水成分を化学的に結合(分子結合)させる事で被膜形成させる方法です。
上記乾燥タイプと違い、ステンレスと撥水成分が化学的に結びついているため、効果持続期間や耐久性が高い事が特徴です。
デメリットとしては、被膜形成に要する時間と手間が掛かる点です。
(被膜形成までのプロセスは選択する薬剤により様々ですが、多くは母材の下処理、長い被膜形成時間、長い乾燥時間が掛かってしまいます。)

これらの特徴から、メタルマスク用途の場合は「撥水タイプ」の「分子結合」被膜が選択される事が多くなっています。
弊社『撥水処理』も「撥水」タイプの「分子結合」被膜となります。
◎滲み抑制、連続印刷性向上『撥水処理』

3.コーティング処理の目的

メタルマスクオプション処理でコーティングを選択される際によく聞くのは「はんだ抜け性向上」です。
しかしながら、はんだの抜け性向上に一番重要なのは、実はメタルマスクの壁面処理、いわゆる「削る処理」の方です。

極端な話ですが、ガッタガタの壁面(ミクロン単位)にコーティング処理(サブミクロン単位)を施すイメージをしてみて下さい。
…平坦なところにコーティング処理を施した方が効果がありそうだな、というのはイメージいただけると思います。
(例えば、ボーリング場の床がガタガタだったら…コーティング以前の問題ですよね!)

コーティング処理を施す目的としては「はんだの抜け性向上」で間違いはないのですが、壁面処理との併用の方が「はんだの抜け性向上」で相乗効果が得られるのでお勧めです!
◎メタルマスクオプション『削る処理』一覧

また、量産時などのメタルマスク1回の使用に何百・何千ショットと印刷をしていると、はんだの粒やフラックス残渣が付着して印刷品質に悪さ(バラツキ要素)をする事があります。
コーティング処理をする事でこういった付着を抑えられる効果もありますので、量産時印刷品質の「安定」効果も見込めます。


いかがでしたでしょうか。
コーティングはググってみると自動車向けが最初に出てきます。
そういう意味ではメタルマスクも金属ボディー(?!)にコーティングするので同じようなものですね。
個人的には久しぶりに学生時代に専攻した化学の知識を引っ張り出す機会となり、脳活になったように思います。(笑)

今年から本コラムはメタルマスクについて更に深堀りした内容でお届けできればと考えております。
次回は上記撥水・撥油コーティングでいろいろ実験を行いつつ、商品開発に繋げてくれている木村が久しぶりに登場します。
是非楽しみにしていて下さい。

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