メタルマスクの研磨処理について|メイコーテクノ
2023年03月30日時点の情報です。
こんにちは、この間ストレッチをしていたらストレッチしていたハズの足がつりました、
㈱メイコーテクノ 品質保証・商品開発担当の木村章稔です。
弊社コラム、《メタルマスクについて徹底解説》をいつもご覧いただき有難うございます。
※過去ログはコラムページをご参照下さい。
第23回目となる今回は“メタルマスクの研磨処理について”をご紹介させていただきます。
前回(第22回、メタルマスクの加工について)が好評だったようで、どうやらシリーズ化のようです(笑)。
さて、シリーズ化とは言ったもののネタはどうしようと悩める日々。
そんな中ふと『前回加工について書いた…のならば、どうせなら生産工程の順を追って解説してみようか…』
というナイスアイデアがひらめきました、でかした我が右脳🧠。
ということで今回は、加工の次工程について書かせていただこうと思うのですが、その前に。
第3回目のコラム“メタルマスクの作り方”にもございますが、改めて簡単にメタルマスク版の生産フローをご紹介致します。
①データ受入(受注)
②データ編集
③レーザー加工
④表面研磨
⑤オプション処理
⑥後工程(コンビネーション・疾風仕上げ)
⑦検査
⑧梱包・出荷
工程を簡単に書きますと上記のように意外と少ないのです。
ご注文を頂き、データを編集し、加工して後処理して検査して梱包していってらっしゃい、です。
ただし各マスクメーカー様同様かと思いますが、お客様のご要望に応えるため、
この少ない工程の中にいろいろな仕様があり、様々な方法があり、多種多様なノウハウが存在しているのです。
その中で今回は、レーザー加工の次工程にあたる“表面研磨”についてお話させていただこうと思います。
それでは徹底解説を進めさせていただきます。
1.表面研磨とは
ご存じの方もいらっしゃると思いますが改めて。
メタルマスクの加工方法は主に3種類(エッチング・アディティブ・レーザー)となります。
メタルマスクの加工方法については第2回コラム”メタルマスクの歴史”でそれぞれの特徴をまとめておりますので是非ご参照下さい!
・第2回コラム メタルマスクの歴史
この中でも現在主流になっている“レーザー加工”で発生する“バリやドロス”を除去することを“表面研磨”と呼んでいます。
レーザー加工は、レーザーを1発1発射出し材料のSUSを貫通させ、その貫通穴を少しずつ重ねて開けていくことで、
結果的に“材料を切断”することになる、ということを前回コラムでお話し致しました。
イメージですが、紙にボールペンなどを刺して貫通させてみてください。
貫通した側(ペン先の方)の穴の周囲は紙がめくれあがっている状態になるかと思います。
レーザー加工でも同様の現象が起こっており、レーザーがSUSの材料を貫通した際出射側にSUSがめくれ上がる状態になります。
これが“バリ”と呼ばれるものです。
またレーザーはSUSを切断する程の熱をもっていますので、レーザーが当たっている(貫通している)部分には溶融金属が発生します。
レーザーの熱によって溶かされた溶融物は出射側に押し出され、そのまま飛散するものとSUS材料側に固着するものとに分かれます。
この“SUSに固着したもの”が“ドロス”と呼ばれるものになるわけです。
バリもドロスもレーザーの出射側、つまりメタルマスク版でいうところの“スキージ面側”に発生するので、
これらが付きっぱなしだと当然スキージングなど印刷性に影響を与えてしまいます。
したがってこのバリやドロスを除去するため、研磨による整面処理を行わなければなりません。
この整面処理が、材料(メタルマスク)の“表面”を“研磨”するという方法のため“表面研磨”と呼ばれているわけです。
2.表面研磨の種類
では表面を研磨するとは何でどうやるのか…。ここは企業秘密的なものがありますので詳細はお話しできません…。
とは言え!徹底解説と言っている以上!ギリギリのところまで攻めてみたいと思います!
私の立場がギリギリになったらどなたかいろいろよろしくお願いします…。😱
さて、研磨と言うと金属磨きで良く聞くのが“バフ研磨”というものではないでしょうか。
バフと呼ばれる円形状の研磨道具(素材は布・麻・ウール・スポンジ等)に研磨剤を塗布し、
高速回転させながらワーク表面に押し当て磨いていく…というものです。
いわゆる“手作業”になるわけですが、メタルマスクのように平坦度・平滑度が重要視されるものとなると、
手作業による研磨バラツキはできるだけ避けたいところではあります。
そうすると機械的(設備的)な研磨となるわけですが、これには不織布系バフロールなどが用いられます。
不織布をロール状にしたものの中に砥粒が混ぜ込まれているので特に研磨剤など必要なく金属磨きが可能です。
設備的なことを言いますと、このロールを回転させ横方向にオシュレーションをかけ、
加工後のメタルマスクをコンベアで流していくと、先述のバリやドロスが除去されて出てくる、という仕組みになります。
この設備もバフロールを回転させる軸が1軸だけのものや表裏研磨できるように4軸あるもの、
研磨の圧力が手動なものや自動調圧のものなど多彩です。故に機械的(設備的)な研磨をする上では、調圧設定やコンベアスピード、
バフロール自体の番手や種類などがノウハウとなってくるわけです。
このようなロールでの研磨や押し当てる平面研磨双方に言えることですが、除去対象であるバリやドロスは、
研磨によってスパッとカッターで切ったみたいに綺麗に根元からカットされるわけではありません。
それに近しい性質のバフも存在しますが、基本的にはバリやドロスを“削る”というイメージになります。
このバリやドロスは開口のエッジ部分に存在していますので、ここを削っていくと開口部の内側へ倒れ込む形にもなります。
崖っぷちで落とされまいとなんとかしがみついているイメージですね。
これを“掻き出す”または“逆方向に削って取り除く”などの方法を併せて研磨を行わないと、
エッジの部分に倒れ込んだものが残存してしまうことになります。
単に削れば磨けばいいだけでしょ?というものではなく、意外と繊細なんです手間かかるんですウチの子(メタルマスク)たち…。
他にも物理研磨だけではなく化学研磨(薬液による溶解)でバリやドロスを除去する方法もあるようですが、
これはバリやドロスだけでなくメタルマスク全体(表面や開口内部)も溶解させるので、
薬液組成や温度・時間などの管理面がノウハウとなるところですね。
3.ドロスが憎い…
1の“表面研磨とは”でもお話ししたように、研磨での除去対象はレーザー加工で発生する“バリ”や“ドロス”です。
レーザーでSUS材料を貫通させるためバリが発生するのは仕方ないとして、問題は“ドロス”のヤツです。
いえ仕組み上ドロスも仕方ないんですがあまりに憎いのでそこは置いといて…。
さて何が憎いかと言いますと、ヤツは生産する上で何かとジャマ💥をしてきます。
①まずレーザー加工のとき。他の同じ開口形状は上手く切断されているのになぜかこの1箇所だけが未切断。
見てみる → ドロスがこびり付いててレーザーが上手く貫通していなかった → 再製作(怒)
②続きまして表面研磨のとき。研磨を終えたメタルマスクを検査していると打痕を発見。
見てみる → ドロスがこびり付いてるところに研磨圧力がかかり打痕になった → 再製作(怒)
③さらに表面研磨のとき。研磨を終えたメタルマスクを検査していると狭ピッチリード部分に何やら黒いものが。
見てみる → ドロスの発生が多く研磨で除去しきれていない → 再製作(怒)
・・・・・泣きそうです(笑)
①は加工時の切断粉がレーザー射出口に詰まり、アシストガスによって『ペッ!』と吐き出されたものが、
レーザーの熱によって塊として融着した、などが原因と考えられます。
②は板厚が厚いなどドロス量が増えた際、研磨で弾き飛ばされたドロスの塊がたまたまメタルマスクの表面に乗り、
そこにたまたま次の研磨軸での圧力がかかった、という不幸な出来事です。
③は狭ピッチ部分における隣り合う開口部のドロス同士がレーザーの熱で融着してしまい、巨大なドロスの塊となったため、
通常の研磨条件で除去しきれなかったことが原因と考えられます。
このような出来事に見舞われつつ、イライラを抑えつつ、『マジかおい』など独り言を言いつつ、
設備導入や加工条件・研磨条件の見直しなど改善を重ね、不良を低減し今日に至っているわけです。
いかがでしたでしょうか。
軽薄短小化が進む実装業界において、この先もまだまだ環境が変化していくことと思います。
その変化に対応できるよう、我々もまた日々様々な事象を改善し解決し邁進して参ります。
今回のコラムもギリギリ攻めたつもりですがちょっと言えない部分が多く、
『木村の攻めが足りない』と思われるかもしれませんが(笑)。何かのお役に立てれば幸いです。
当社では基板実装におけるお客様の課題解決を目的とし、「本気のモノづくりに応える」を掲げながら日々のモノづくりに取り組んでおります。
東京、神奈川を中心に、おかげさまで最近ではモノづくりの本場、大阪や愛知からのお問い合わせも増えてきました✨
メタルマスクのことならメイコーテクノへお気軽にお問い合わせください。
面白かったです!
木村様とはとある評価の立ち合いでお会いして以来で懐かしいです。
またお会いできる日を楽しみにしております。