メタルマスクでできる実装改善~チップ立ち対策編~
こんにちは、(株)メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
最近何の記事を書こうか頭を悩ませているのは内緒のお話なのですが
岐阜県のお客様を訪問した際に、「ならチップ立ちについて書いてみれば?結構気にしている人多いと思うよ?!」と
お聞きし「これだ!」と思いこの記事を書くことにしました。
さて、このチップ立ち不具合はある意味特殊で、「別名」が存在します。
・マンハッタン現象
・トゥームストーン現象
…「名は体を表す」、まさにこの表現がぴったりですよね。
本記事では、そんなチップ立ち不具合についての発生メカニズムやメタルマスクを含む解決策をまとめています。
「メタルマスクでできる実装改善」記事も気付けば3本目、私自身も勉強になるなぁーと思いつつ記事を書いていますので、読んでいただく方にもできるだけわかりやすくまとめていければと思います。
1.チップ立ち不具合って?
ではまずチップ立ち不具合ってどういうものなの?をできるだけわかりやすい言葉でまとめてみます。
チップ立ち不具合は、電子基板の上に小さな電極部品(抵抗やコンデンサなど)を はんだ付けする際、部品がまるでビルや墓石のように「ピタッと垂直に立ち上がってしまう」ことです。
片方の電極が完全に宙に浮いてしまうため、電気的な接続が遮断され、回路が動かなくなる原因になります。
見た目がニューヨークの摩天楼(スカイライン)に似ていることから「マンハッタン現象」、あるいは墓石に似ていることから「トゥームストーン(墓石)現象」とも呼ばれます。
遊び心ですが…AIでイメージ写真を作ってみました。
実装のメンバーとこの画像で盛り上がっていた時に聞いたのですが、特に墓石の写真は「チップ全部立っちゃった!って時に似てる!!」って言っていました。
確かに囲われている部分が基板の外形に見えるかも?!皆様はいかがですか??

◎イメージ写真:マンハッタン

◎イメージ写真:トゥームストーン(墓石)
2.原因とメカニズム
ではなぜチップ立ちが起きるのか?原因は一瞬の「綱引き」です。
チップ部品の両側にある「はんだペースト(クリーム状の はんだ)」は、本来なら加熱されたときに左右同時に溶けるのが理想です。
しかし、基板の熱設計や炉内の温度バラつきによって、「片側の はんだ が、もう片側よりほんの少し(0.2秒ほど)早く溶けてしまう」ことがあります。
はんだは溶けて液体になると、キュッと縮んで部品を引っ張る力(表面張力)が発生します。
このとき、部品の上で以下のような「綱引き」の力関係が生まれます。
この現象を物理学的な式に表せるようで、調べてまとめてみました。
■ 引っ張る力(溶けた はんだ の力)
・駆動モーメント(T3):先に溶けた はんだ が、チップを自分の側に引き寄せ、起き上がらせようとする回転力。
■ 引き止める力(耐える力)
・部品の重さ(自重:T1):部品そのものが下に留まろうとする力。
・下面引き込み力(T2):まだ溶けていない反対側の はんだペースト が持つ「粘り気」で、部品を引き止めようとする力。
■不具合が確定するメカニズム
左右の はんだ が溶けるわずかなタイムラグの間に、もし、まだ溶けていない側が耐えきれず、引っ張る力が引き止める力を上回ってしまうと、バランスが崩れます。
物理の式で表すと、以下のような状態です。
T1 + T2 < T3
この瞬間、先に溶けた はんだ の表面張力に部品が引きずられ、そちら側のパッドを支点にして部品が起き上がってしまいます。
そのまま はんだ が冷えて固まることで、部品が立った状態(不具合)が確定します。
わかったようなわからないような…(笑)
とても簡単にまとめると、綱引きに勝ったほうでチップが立っちゃうよ、という事ですね。

◎イメージ図:チップ立ちメカニズム
3.チップ立ち不具合の対策
じゃあこの不具合をどうやって対策するのか?
一言でまとめると、この綱引きを発生させない(=左右同時に はんだ を溶かす)事になります。
具体的には…
■ パッド(ランド)設計の最適化
・左右のパッドサイズや形状を均等にすることで、熱の伝わり方や はんだ の引っ張る力を左右で完全に一致させる
■ サーマルリリーフの配置
・片側のパッドだけが大きな銅箔(グラウンドなど)に繋がっていると熱が逃げて溶けるのが遅れるため、熱が逃げにくい配線パターン設計(サーマル接続)にする
■ リフロー炉の温度プロファイル調整
・予熱時間を十分に確保して基板全体の温度差(ΔT)を減らし、本加熱に入ったときに左右の はんだ が同時に融点へ達するようにする
■ メタルマスク(開口設計)の適正化
・左右の はんだ塗布量にバラつきが出ないよう、印刷工程で均一な厚みと正確な位置に はんだペーストを供給する
よく聞くのは、例えば1608と1005どちらのサイズでも乗せられるようにパッドの設計がしてあって、1005の部品電極がパッドにギリギリに接する設計で、実装したら少しズレて片方が接しておらずリフローの時に…。
ドキッとした方、いらっしゃるのではないでしょうか??
こういった場合、レジストの抜きのサイズにもよりますが、メタルマスク開口を少し「内側」に寄せてあげることで改善する場合があります。
上記も含め、対策は個々の基板設計にもよりますので、基板データ(パターンやレジストやシルクの配置)等を見ながら議論させていただければと思いますので、お気軽にご相談ください。
いかがでしたでしょうか?今回はチップ立ち不具合についてまとめました。
今後も不具合事例とそれの解決策はまとめていきたいなと思っています。
正直何を書いたらいいんだろう?と悩むことが多いので、「こういった事で困ってるよ」とか「こういう内容を記事にして」などご意見・ご要望があると非常にうれしいです。
引き続きメタルマスク徹底解説コラムをよろしくお願いします!





