メタルマスクでできる実装改善~ボイド対策編~
2026年8月3日時点の情報です。
こんにちは、株式会社メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
最近、「実装不良の原因をメタルマスク側から見直したい」というご相談をいただく機会が増えています。
ありがたいことに、前回「チップ立ち対策」コラムのコメント欄にも記事ネタをいただき、今回の記事を書くに至りました。いつも本コラムをご覧いただき誠にありがとうございます!
さて、その中でもBGA、QFN、LGA、パワーデバイス、放熱パッド付き部品などでよく話題になるのが、
はんだ接合部の中に空洞が残ってしまう「ボイド」です。
ボイドは、外観検査では見えにくい不具合です。
しかし、X線で確認すると、はんだの中に丸い空洞や大きな抜けのような形で見えることがあります。
「多少のボイドなら問題ないのでは?」「なぜLGAやQFNでボイドが増えやすいの?」「メタルマスクの開口設計で本当に改善できるの?」今回は、そんな疑問に対して、できるだけ現場で使いやすい形で、ボイドの発生メカニズムと対策を整理してみます。
1.ボイドとは何か?
ボイドとは、リフロー後のはんだ接合部の内部、または接合界面付近に残った空洞のことです。
簡単に言えば、はんだで満たされるべき場所に、気泡やガスの抜け残りが閉じ込められた状態です。

はんだペーストは、金属粉末とはんだ付けを助けるフラックスで構成されています。
リフローで加熱されると、フラックス中の溶剤や活性剤が揮発・反応し、ガスが発生します。
通常であれば、このガスは溶融したはんだから外へ抜けていくのですが、基板と部品の間のすき間が狭い場合や、はんだが広い面積で一体化してしまった場合、ガスの逃げ道がなくなります。 その結果、はんだ内部に気泡が残ったまま固まり、ボイドになります。
2.ボイドが問題になる理由
ボイドは単なる見た目の問題ではありません。
特に放熱性、機械的信頼性、電気的特性に影響します。
■放熱性の悪化
はんだは金属なので熱を伝えやすい材料です。一方、ボイドの中は空気やガスの空洞なので、熱をほとんど伝えません。そのため、パワーデバイスや放熱パッド付きQFN、LGAモジュールなどでボイドが多いと熱の逃げ道が減り、局所的な温度上昇につながります。

■機械的強度の低下
はんだ接合部の中に空洞があると、実際に荷重を受け持つ断面積が減ります。 さらに、ボイドの周囲には応力が集中しやすくなります。温度サイクルや振動、落下衝撃などが加わる用途では、ボイドを起点にクラックが進展するリスクがあります。

■電気特性・高周波特性への影響
一般的な電源・信号用途では、多少のボイドがすぐに導通不良になるとは限りません。
ただし、高周波回路や大電流用途、グランド接続が重要なモジュールでは、接合状態のばらつきが特性に影響する可能性があります。

3. なぜボイドは発生するのか?
ボイドの主な発生要因は、フラックス由来のガス、基板・部品の吸湿、ガスの逃げ道不足、はんだ量過多、リフロープロファイル、基板設計などです。
ボイド対策で重要なのは、ガスの発生をゼロにすることではありません。
ポイントは、発生したガスを「はんだが固まる前に逃がす」ことです。
| 要因 | 内容 | 現場で見られる傾向 |
|---|---|---|
| フラックス由来のガス | 加熱中に溶剤や活性剤が揮発・反応してガスが発生する | はんだ量が多い部分、大面積パッドで出やすい |
| 基板・部品の吸湿 | 水分がリフロー中に蒸気となって発生する | 保管条件、ベーキング条件の影響を受ける |
| ガスの逃げ道不足 | 部品と基板のすき間が狭く、外へ抜けにくい | LGA、QFN、BTC部品で問題になりやすい |
| はんだ量過多 | 供給されたペースト量が多く、溶融時に広い液相膜を作る | ベタ開口や大面積ランドで発生しやすい |
4. LGAやQFNでボイドが増えやすい理由
LGAやQFNなどの底面電極部品は、小型化・高密度化・放熱性の面で優れていますが、ボイドに関しては注意が必要です。
LGAは部品底面のランドとはんだペーストによって接続するため、リフロー後のスタンドオフ高さが低くなりやすく、発生したガスが外へ抜けるための通路が狭くなります。
また、QFNなどのBTC部品では中央に放熱用の大きなパッドを持つものが多くあります。この部分にメタルマスクを1:1のベタ開口で設計すると、印刷されたはんだペーストが広い面積で一体化しやすくなり、内部のガスが抜けにくくなります。
5. ボイドの種類と見え方
| 種類 | 特徴 | 主な要因 |
|---|---|---|
| マイクロボイド | 比較的大きな丸い空洞 | フラックスガス、はんだ量過多、脱気不足 |
| 大面積ランドボイド | QFN/LGAの中央パッドに出る大きなボイド | ガス逃げ不足、ベタ開口、低スタンドオフ |
| 微細ボイド | 接合界面付近に小さく分散 | 表面処理、界面反応、残渣 |
| 凝固収縮ボイド | いびつな形状になることがある | はんだの凝固収縮 |
| ビア起因ボイド | ビア直上に発生しやすい | Via-in-Pad、基板内部からのアウトガス |
6. メタルマスクでできるボイド対策

ここからが、メイコーテクノとして特に大事にしたいポイントです。
ボイド対策は、材料、リフロー、基板設計、部品構造など複数の要因が関係します。
その中でも、メタルマスクは「はんだ量」と「ガスの逃げ道」をコントロールできる重要な要素です。
6-1 ベタ開口を避ける
大面積パッドに対して、パッドと同じサイズで1つの大きな開口を作ると、はんだペーストが全面に印刷されます。
一見すると、はんだ量をしっかり確保できて安心に見えますが、広い面積のはんだが一体化すると、ガスの逃げ道が少なくなります。
6-2 格子状開口を使う
大面積パッドでは、1つの大きな開口ではなく、複数の小さな開口に分割する「格子状開口」が有効です。
窓枠のように開口を分けることで、印刷されない部分がリフロー中のガス抜け経路として働きます。
| 開口設計 | 特徴 | ボイドへの影響 |
|---|---|---|
| ベタ開口 | 大きな開口で全面に印刷 | はんだ量は多いが、ガスが抜けにくい |
| 格子状開口 | 開口を格子状に分割 | はんだ量を調整しながら、ガスの逃げ道を作りやすい |

6-3 はんだ面積率を調整する
格子状開口では、「どれくらいの面積を開けるか」も重要です。
大面積パッド全面に対して、はんだペーストを100%供給するのではなく、必要な接合強度と放熱性を確保しつつ、過剰なはんだ量を避けます。
ただし、ここは一律で決める事は難しく…部品サイズ、パッド寸法、要求される放熱性、リフロー条件、基板表面処理、はんだペーストの種類によって最適値は変わります。
7.LGA向けにはステップアップマスクも選択肢になる
LGAでは、スタンドオフが低くなりやすいことがボイドの一因になります。そのため、一定のはんだ量を確保し、部品と基板の間に適切なクリアランスを作ることが有効な場合があります。
ただし、全体のマスク厚を上げると、他の微細部品でブリッジや過剰はんだが発生する可能性があります。このような場合、LGA実装部だけマスク厚を増やす「部分ステップアップ(ハーフエッチング)マスク」が選択肢になります。
たとえば、周辺の微細部品には薄いマスク厚を維持しつつ、LGAや放熱パッド部だけ局所的に厚くすることで、必要なはんだ量を確保しやすくなります。
もちろん、ステップアップには段差位置、スキージ条件、近接部品との距離などの制約があります。
8.メタルマスク以外の対策もセットで考える
ボイド対策は、メタルマスクだけで完結するものではありません。
はんだペースト、リフロープロファイル、基板設計、真空リフローなど、工程全体で見ることが大切です。
- はんだペーストは、低ボイド対応品やフラックス設計の違いにより、ボイド発生傾向が変わります。
- リフロープロファイルでは、ソーク帯(=はんだが溶ける直前に、基板全体の温度を揃え、フラックスを活性化させる期間)で溶剤や水分を十分に抜き、はんだがしっかり接合できる時間(TAL)を確保することが重要です。
- 基板設計では、Via-in-Pad、レジスト段差、SMD/NSMD構造などがボイドに影響します。
- 高信頼性用途や低ボイド率が強く求められる製品では、真空リフローも有効な選択肢です。
9. ボイド評価では「量」だけでなく「位置」も見る
ボイド評価では、ボイド率だけを見て判断しがちです。
しかし、同じボイド率でもボイドの位置によってリスクは変わります。
はんだ接合部の中央にあるボイドと、パッド端部や界面付近にあるボイドでは、クラック進展への影響が異なる場合があります。
特にBGAやLGA、QFNでは、X線検査による確認が重要になります。
2D X線では重なりの影響で判断しにくい場合もあるため、必要に応じて斜め観察、3D X線、CT、ラミノグラフィなどを使い、ボイドの立体的な位置を確認することもあります
10. まとめ:ボイド対策は「ガスを出させない」より「逃がす設計」
今回は、SMT実装におけるボイドについて、発生メカニズムと対策を整理しました。
ボイド対策では、「はんだをたくさん載せれば安心」とは限りません。
むしろ、はんだ量が多すぎることでガスの逃げ道がなくなり、大きなボイドにつながることがあります。
・ボイドは、はんだ内部や接合界面に残る空洞です。
・放熱性、機械的強度、電気特性に影響する場合があります。
・LGAやQFNは、低スタンドオフや大面積パッドによりボイドが出やすい部品です。
・大面積パッドでは、ベタ開口よりも格子状開口が有効な場合があります。
・メタルマスクでは、はんだ量とガスの逃げ道を設計することが重要です。
・LGAでは、必要に応じて部分ステップアップマスクも選択肢になります。
大切なのは、必要なはんだ量を確保しながら、発生したガスが逃げられる構造を作ることです。メタルマスクの開口設計は、そのための有効な手段の一つです。
特にQFN、LGA、放熱パッド、大面積GNDパッドなどでボイドにお困りの場合は、部品仕様、基板データ、リフロー条件、X線画像などを確認しながら、開口設計を一緒に検討できればと思います。
「この部品のボイド率を下げたい」「ベタ開口でよいのか、分割した方がよいのか迷っている」「LGAのはんだ量とブリッジのバランスを見直したい」このようなお困りごとがありましたら、ぜひメイコーテクノまでご相談ください。





