アディティブメタルマスクについて|メイコーテクノ

こんにちは、㈱メイコーテクノ 営業担当の山口裕之です。
弊社コラム、《メタルマスクについて徹底解説》をいつもご覧いただき有難うございます。
第17回目となる今回は、メタルマスクの作り方シリーズ第3弾としてアディティブメタルマスク(アディティブマスク)について徹底解説させていただきます。

「アディティブ」とは「レーザー」や「エッチング」のように、メタルマスク工法の1つとなります。
ググってみると…出てくるのは基板製造工程ばかりです。
ではメタルマスクは?という事でペン(キーボード?)を取らせていただきました。

それでは徹底解説を進めさせていただきます。


1.そもそも『アディティブ』メタルマスクとは?

一言で言うと、めっき(メッキ、鍍)で作る版で「電鋳(でんちゅう)法」とも言われます。

めっき

表面処理の一種で、金属または非金属の材料の表面に金属の薄膜を被覆すること。

めっきには電気めっきや溶融めっきなど様々な方法があり目的や用途によって使い分けられる。

wikipediaから引用


メタルマスクはこの中の電気めっき(電解めっき)で作られ、精密な加工に適している「電鋳」で製造されます。
某「下町ロ〇ット」に出てくるロケットエンジンの燃焼室などもこの電鋳法で作られています。
精密な加工に向いている一方で、加工時間が掛るのが難点です。
そのへんがメタルマスク工法の移り変わりに関わってきます。

2.メタルマスク工法の移り変わり

アディティブメタルマスクはとても高精密で、ICパッケージなどに使用されるものだと数μmといった小さな穴が何十万穴あいているといったものもあります。
ただし、ここまで精密なものだと前記した通り加工に時間も掛かり、価格が1版あたり数十万円…基板表面実装向けメタルマスクの価格から考えると…ビックリですよね。

この辺のデメリットと基板表面実装に必要なスペックとの兼ね合いで、以前コラムでも書かせていただいたように、
エッチングメタルマスク→アディティブメタルマスク→レーザーメタルマスク
と工法が移り変わっていく事となります。
・コラム「メタルマスクの歴史」

3.アディティブメタルマスクのつくり方

では実際にアディティブメタルマスクがどのようにつくられていくのかをご紹介させていただきます。
基板の製造方法にとても似ていて、大きく分けて8つの工程があります。

①母材準備
めっきをくっつける板を準備します。
SUS板を使う事が多く、この母材に電気を通してめっきを析出していく事になります。
②母材にドライフィルムレジスト(以下ドライフィルム)をラミネート
ドライフィルムとは薄いフィルムで、UV(紫外線)によって硬化する感光性フィルムです。
穴になる(めっきを析出させない)所を形成する為に用います。
まずは母材全面にドライフィルムをラミネート(貼り付け)します。
(③フィルムorガラスマスク作成)
最近は光学的な直接描画が増えてきましたので、フィルムorガラスマスクを作成しない場合もあります。
②の通り、ドライフィルムはUVで硬化しますので、UVの当たる所と当たらない所を作る為に用います。
このフィルムはアディティブメタルマスクの場合は「ネガ」タイプのフィルムで、開口となる部分を透明(UVを通す)に、それ以外を黒く(UVを通さない)します。
④露光
ドライフィルムにUV光を当てます。
上記③のフィルムやガラスマスクを用いる場合と、それらを使わずレーザーで直接光を当てる方法があります。
UVが当たった箇所のドライフィルムは硬化します。
⑤現像
UV光の当たっていないドライフィルムを取り除きます。
硬化したドライフィルムが残り、これが後々メタルマスクの穴の部分となります。
⑥めっき付け
現像が終わった母材をめっき層の中に入れます。
めっきの主材はNi(ニッケル)で、母材に電気を通すことで母材にNiめっきがくっついてきます。
この時残っているドライフィルムにはめっきは付かないので、次の工程で残ったドライフィルムを取り除くとメタルマスクの穴となります。
⑦剥離
残ったドライフィルムを取り除きます。
アディティブメタルマスクの場合、穴になる部分にドライフィルムが残っています。
⑧母材からめっき(版の部分)を取り外し
母材からNiめっき部分を取り外してメタルマスク版の完成です。


※ドライフィルムのメカニズムは「ニッコー・マテリアルズ(株)」様のホームページを参照しました。
非常にわかりやすかったのでURLを掲載しておきます。
利害関係は一切ございません(汗)
・ニッコー・マテリアルズ(株)様 露光・現像・アルカリ剥離の基本的なメカニズム説明

4.アディティブメタルマスクの製造公差

用途や選択する工法によって様々となりますので、基板表面実装向けの一般的な公差を記載しておきます。
・開口公差:+0.15mm,-0mm
・テーパー量(基板接触面側-スキージ側):0.02mm以下
・板厚公差:指定板厚の±5%
・位置精度:±0.020%(フィルム露光の場合)

5.アディティブメタルマスクの今後

コラム「メタルマスクの歴史」でもご紹介させていただきました通り、この基板表面実装の印刷版はほとんどがレーザー加工に変わりました。
弊社生産版数でも、レーザー版99%アディティブ版1%となっており、アディティブ版の主戦場はICパッケージ向けとなっております。
ただし、レーザー加工の最小穴径は0.1mmとしているところがほとんど(実際はもっと小さい穴をあける事は可能)で、高密度になると加工熱による歪みが出てしまうという弱点もあります。
今後軽薄短小が進み、0201や01005がよく出回るようになると、アディティブ版の復権もあるかもしれません。
もちろんレーザー加工機の性能も日々進化していますので、逆にICパッケージ向けにも対応できる日がくるかもしれません。

我々も時代の流れに沿ったものづくりができるよう、開発設備投資を進めて参ります!


いかがでしたでしょうか。
今回はアディティブメタルマスクについてご紹介をさせていただきました。
この辺を勉強していると元素記号が並んだりしてウワッ!ってなる人が多いと思いますが、実は私、元々化学屋さんだったのでこの手のお話は大好物なんです(笑)
という事で、次回はもう少しお付き合いいただきまして、アディティブメタルマスクが使われているICパッケージの中で、メイコーが参入を発表したパッケージ基板向けのお話にスポットを当ててご紹介できればと考えております。

当社では基板実装におけるお客様の課題解決を目的とし、「本気のモノづくりに応える」を掲げながら日々のモノづくりに取り組んでおります。
トレンドを先取りできるような技術開発が進められるよう努めております。

弊社コラム《メタルマスクについて徹底解説》をいち早くお届け♪
メルマガ配信登録はこちらから↓

    過去のコラムはこちらから→【メイコーテクノコラム】

    お問合せ

      コメントを残す